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【ネタバレ】2022/5/21昼 舞台『キノの旅 -the Beautiful World-』

わたくし、シズノと申します。いつもはライブに行ったり舞台を観たりして以下のブログで感想を綴っている推し沢山の薄給OLでございます。

この本名とはまったくかすりもしないハンドルネームは小学校低学年のときからずっと愛読している小説「キノの旅 -the Beautiful World-」の登場人物のシズとキノから名付けたもので、一時期は表記が漢字だったりもしましたが、かれこれ15年ほど愛用しつづけています。

そんな登場人物の名前をハンドルネームにしてしまうほどに、わたしが愛してやまない作品が今回舞台化されるということで…さすがに観に行かないわけにはまいりませんでした。推しが出演する作品以外の舞台を観に行くのは初めてだ〜!たのしみ!です!☆

 

 

5/21(土)

早速、どのお話が上演されるのか予想をしたいと思います(ネタバレ避けてきたマン)

まず、公式Twitterで上がっていた舞台写真から「コロシアム」、登場人物から「優しい国」「人を殺すことができる国」「夕日の中で」は確定でしょうか…あとはあらすじの「森の中で」もですよね!たぶん!

問題は師匠相棒コンビがどの作品に登場するのか…なんとなーく1〜10巻あたりの話を主に上演しそうな気がするので無難に出会いの「長のいる国」ですかね…

あとは上演時間が1時間50分と意外と短いのでなにをどう盛り込むか…希望としては〜と書こうと思ったんですけども、わたしが好きな話はどう考えてもネームドキャラクターが登場してしまうからなあ…ぐぬぬぬ…

 

昨年秋以来のシアターサンモールに到着。とはいえ、I列より前に座ったことがなかったので、きょうはちょっぴり新鮮です!しかしこれはめちゃくちゃマットだなあ〜

舞台には夜の森の中の景色が映し出され、虫の鳴き声がちりちりんと響き渡っています。上手にキノのコートがさりげなーく置いてあるのが気になる…

ギリギリに滑り込んだので、あっという間に開演時間が近づいてきました。いってきます!☆

 

 

舞台『キノの旅 -the Beautiful Wolrd-』

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舞台化が発表されたときに(あくまで)女性であるキノを男性が演じるという話を聞いて、まあそういう作品もあるよね~キノはキノだから性別はべつにきにならないなあ~と思っていたのですが、それよりもわたしがいちばん大好きなエルメスが擬人化するという話を聞いたときには…百聞は一見に如かずにせよ…さすがに白目を剥いてしまって…

そもそもいままでただの原作好きという立場からいわゆる2.5次元舞台を観に行ったことがなかったので、映画やドラマの実写化のような改悪を容易に想像してしまったために(一応最悪のことを考えて)もしかしたらエルメスが人間として扱われてしまうのか?と不安で身がちぎれそうになったものの、ひとまずエルメスモトラドとして登場して安心しました…!

そしてモトラドとして登場したとしても、生身の人間が演じているエルメスを受け入れることができるのか、という問題もありましたが…完全に杞憂に過ぎませんでしたね…

 

エルメス、最初のビジュアル公開で「これはトンチキ作品かァ!?」と思ってしまったのですが、舞台を見るにあたっては違和感はありませんでした。だって…モトラドの形はしてなくとも、ちゃんとわたしの大好きなエルメスが目の前に存在するんですもの…!!!

感情表現はあれど一定の落ち着いたトーンを保った高い声もあるんですけども…基本的にはのっぺらぼうで、ちょっとこころの機敏はあっても空気感を醸し出す程度で、セリフで感情を出してもそこまで余韻を残さないドライな表情が完全にエルメスでした…エルメスに表情はないはずなのに、あれはエルメスの表情だと断言できるのよ…おかしいよ…

 

キノがエルメスをエンジンをかけずに押して動かすときは腕を掴んでゆっくりと押し出して(エルメスは前ならえのいちばん先頭のひとのポーズをしていました)走り出すときはサイドスタンドを蹴ってエルメスに乗る仕草をして両腕を掴んで一気に袖へ駆け抜ける…とひとつひとつの芸が細かかったなあ…たぶんこれめちゃくちゃこだわってますよね…?

てか下手にエルメスモトラド(バイク)で登場して、同じように動かすとしたらここまで細かい仕草はできなかったんじゃないかなあ~と思います。物がないからこそ、より一層表現として豊かになるというかなあ…

あと純粋にエルメスが人間だからこそ融通の利きやすい部分があったような気がする…技術的なことや専門的なことはまったくわからないけども…なんとなくそう思ったんだよなあ…(メタ発言)

曖昧な記憶で語ってしまって恐縮なのですが、エルメスもサイドスタンドを立てる/外す仕草をしていたような気がする…どういう動きだったか忘れちゃったけども…

なにがどうってさあ…エルメスとキノの体格差が華奢なキノが重くて大きなモトラドエルメスを動かしている感があって、めちゃくちゃよかったよね…!♡

 

キノのひとつのキーポイントである「コート」の話。あれは元祖キノからの譲りものだからさ…ちゃんと袖が折ってあるのが「わかってる」なあって…

あとエルメスと走り出したときにキノのコートが靡くのが疾走感を演出してて巧いな…と思ってしまいました…

 

キノのお顔があまりにも可愛すぎた…あんステでしののん演じているのも思わず納得してしまった…でも刀ステの肥前くんはダウト…だってビックリするほど透明感があるよ…!?

あのキノだったら全然「大人の国」も「何かをするために」も上演されてもおかしくないですね…赤いリボンとロングヘアにピンクのかわいいフリルのワンピース!プリーズ!

「コロシアム」でのふわふわもふもふの陸を前にしたときの目の輝き、ちょっとした仕草やポージング、そして身体のシルエットが完全に黒星紅白先生の描くキノそのものでした…

正直これはかえってキノを男性の役者さんが演じてよかったなあ~とまで思っています。わたし自身あんまり性別で物事を語りたくないというか、そもそも性別という概念が好きではないのでアレなんですけども…女性が演じるとキノが可愛すぎちゃうのかなあ、って…だって男性である櫻井さんが演じてもキノがめちゃくちゃ可愛いんだよ???むしろちょっとキノにしては可愛すぎると思ったくらいだよ???だって明らかに1~5巻あたりの黒星先生の中性的なキノの作画じゃないじゃん…これはちょっと女の子っぽい雰囲気を兼ね備えた最新刊のキノの作画だよ…

しっかし…早朝のトレーニングや「コロシアム」での戦闘シーンなどのキノのガンアクションがめちゃくちゃカッコよかったなあ…!これはガンオタである時雨沢先生にもご満足いただけるのでは…!

 

すべての話において、あまりにも原作に忠実すぎて頭が上がりませんでした…!もちろん多少は省かれているセリフはあれど、基本的にほぼほぼ同じでしたよね…?

正直キャラクターや用語(モトラドやパースエーダーなど)の小説ではある説明がまったくないなど、原作未読のひとにはちょっと優しくないのかなあ~と思ったのですが、これはこれで「キノの旅」という作品らしいのかなあ、と思いました。そういう作品だと思って見ていただければよいのだけども…てか!原作を!!!読んで!!!グッズといっしょに販売されていたから!!!(圧力)

 

ネタバレありの櫻井さん辻さん山本さんのインタビューを読みました。エルメスエルメスとしてちゃんと成立していましたよ…認めるもなにも認めざるを得なかったです…演じてくださってありがとうございました…!

 

 

以下、原作を読みながらお話ごとに語っていこうと思います。原作を片手に語れることほど贅沢なことはないですね!☆

 

「森の中で・b」

原作「キノの旅」は1冊でプロローグ(b)→短編数本→エピローグ(a)という構成になっているのですが(エピローグとプロローグは話がつながっているものの、時列系はa→bの順番になります)プロローグであるbから幕が開く時点で原作へのリスペクトを感じました…ありがとうございます…!

 

「人を殺すことができる国」

キノが山盛りクレープを食べ切る直前に通りすがりに山盛りクレープが回収されるのですが、折りたたみバケツの如くぺしょーんとなっているクレープの姿がシュールでした笑

路上の男から身を隠すときにエルメスが馬跳びの馬の姿勢をして、その上をキノが転がって隠れるシーンは、あれはエルメスが擬人化しているからこその所業だったなあ…

「人を殺すことのできる国」は2作目のアニメでも放送されていて、人気投票でも6位にランクインしているお話なんですけども…個人的にはめちゃくちゃ好き!という話ではないものの、寓話らしい寓話ですし、入国前の男と出国後の男の対比など「キノの旅」の魅力が溢れていて分かりやすいお話なのかなあ~、と思いました。

 

「歴史のある国」

師匠相棒コンビによるスカっとジャパン話!ですね!お話のオチもオチなのでほかのお話よりもギャグ味が強かったなあ~…

個人的に今回2.5次元化されていちばん映えたのは師匠じゃないかな…?と思いました。警官と交渉するときのちょっとした仕草とか様になっていましたし、そもそも佇まいがめちゃくちゃカッコよいのよ…!♡

あと警官の格好をした師匠がパパッと早着替えをするのがめちゃくちゃよかったですね…あのズボンって巻きスカートみたいな仕組みになっているんだ…!?

いま原作を読み返していて気づいたのですが…エルメスの「踊れマンボウだね」というセリフに対して、原作ではキノがスルーするものの、舞台ではこのセリフの瞬間に下手にいる師匠相棒コンビが上手のキノエルメスコンビのほうを振り向いて、キノが「鬼に金棒だよ」と小声で言っていました。原作に忠実というのもよいのですが、その相違を比較できるというのも原作ありきの舞台作品の醍醐味だなあ~…たのしいね!あとそのあとのエルメスの「そうそれ」が完全にエルメスの「そうそれ」だったわ…すこすこ…

立てこもる師匠一派に対して警官が呼びかけるくだりがめちゃくちゃギャグだった…いやもともとギャグなんですけども…生身の人間が演じているとここまで滑稽でおもしろくなるもんなんですね…いつもは客席で声を出して笑うことは控えているのですが、このシーンに関してはちょっと抑えることができなかったです…!あんなにも高飛車な態度をしていた警官の「おはようございます…」の声がまるで死にかけのセミのような声だった…笑

 

「夕日の中で・a」

ウィルという名前の人物が登場するということで、正直「どの話だ…?」と原作を読み返しました。それほどになかなかシブいチョイスだと思います。

原作ではエピローグ/プロローグ作品ですが、舞台では時列系通りの順番でした。でもちゃんとaとbに分けられていて…このセパレートがこれまた味があってよかったなあ…

 

「コロシアム」

わたしはご存知のとおりエルメスがあまりにも好きすぎるオタクなんですけども…シズ様もめちゃくちゃ好きなんですよね…!だってシズ様ったら、やさしくて強くてかっこよいのに、ちょっとした隙があってかわいいんだもん…!♡

対戦相手全員、小説からポンっと出てきたような姿でよかったなあ…人気のお話のひとつである「コロシアム」はあらゆるメディアミックスで形になってきましたが、たぶんいちばん再現度が高かった気がします!とくに2回戦目!めちゃくちゃ気味悪かった!笑

原作を読んでいてふと。現国王には二人の子供がいて…という話ですが、ひとりはシズ様で、もうひとりの話って出てこないのかなあ、なーんて思ったり。きになるう…

わたしも案の定「コロシアム」は好きな話のひとつなのですが、キノがシズ様(の後ろの国王)に銃口を向けたときの「あなたの後ろには、誰がいる?」のシーンを見たときには、わああ!!!いまわたしマジでキノの旅の舞台を見てるやん!!!と昂ってしまいました…

「コロシアム」だったかなあ、シズ様戦を終えたキノがエルメスにコートを着させてもらっていたのは…!

シズ様との再会前のシーン。陸が登場してエルメスといがみ合っているときに後ろで「はわわわ…」と言わんばかりの表情をしているキノがめちゃくちゃかわいかった…!いざ陸を撫でると「かわいい…かわいい…」と憑りつかれたように撫で回して、終いには陸をなぎ倒すまでに至るとシズ様に「キ、キノくん…」とドン引きされつつも押さえつけられていたのがおもしろかったです笑 わかるよ…ふわふわもふもふこそ正義だよね…!

 

「なってないひとたち」

話自体は覚えていてもどうしてもタイトルが思い出せず、帰りの電車でタイトルを探してしまいました。これまた激シブチョイスですね!☆

キノから師匠、師匠からシズ様のターンに移るときにアンサンブルの皆さんがアグレッシブで愉快なダンスを披露するのですが、あたたかくも救われない気持ちになる「優しい国」の前の束の間の安らぎでしたね…

 

「優しい国」

キノの旅で最も語られているであろう「優しい国」は、いまのキノが「キノ」になるきっかけの「大人の国」とリンクする部分もあって、その前提があるからこそこころに響くものがあると思うのですが…今回は「大人の国」は上演されませんでした。原作未読のひとは「大人の国」からの伏線を味わうことができないのね…と内心さびしく思えど、なんというか、もはやこの舞台は原作を読んでいる前提でつくられているような気がしますね…だからこそ原作にめちゃくちゃ忠実だったと思うんだよなあ…

機械工に「いっちょよろしく!」と腕タッチをしたあとに、工具でナットをいじられるとまるで肩もみをされているかの如く「そこそこ~!」と言わんばかりの恍惚の表情をしているエルメスがとてもかわいかった…!よかったね…!(あたたかい目)

いやあ、もう、さあ…どのように言語化したらよいのかわからないんですけども…今回キノが舞台化されたことでより一層こころに響いたのが「優しい国」でしたね…!というのも、最後のお見送りのシーンでステージ上にいるキノ(とエルメス)以外の生身の人間がこのあと火砕流に飲み込まれて死んでしまうと考えるだけでもう…あまりにもしんどくてしんどくて…「またいつか!」というセリフを聞いたときには思わず鳥肌が立ってしまいました…

「バイオクラスティック・フロウ」という難しいカタカナをめちゃくちゃ早口でスラっと言えるエルメスが最高にエルメスだったなあ…

「今からボクがあそこに行って、何かできることあるか?」というキノのセリフのあとのエルメスの「ないよ」が…今回のエルメスって、感情にせよセリフにせよあんまり余韻を残したり間を置いたりしない印象があったのですが、このセリフでは「…ないよ」と一拍置いて聞こえました。原作では「間髪入れず」という地の文になっているものの、これはこれで対比ができてよかったなあ…

 

「夕日の中で・b」

今回の舞台ではキノエルメス以外の役者さんがアンサンブルの役割をされていて、少なくとも「優しい国」で師匠相棒の役者さんが他の役で登場していたので、内心「これはきっとお着替えタイムだ…!」と思ったのはどうかナイショにしてください笑

(「夕日の中で・a」のときにも申し上げましたが)この話をチョイスするとはなかなかシブいなあ~と思えど「世界は美しくなんかない。そしてそれ故に美しい」というキノの旅のキャッチコピーに通じるところがあるからかなあ~、なんて思ったり。

 

「森の中で・a」

エピローグ/プロローグ作品の時列系を入れ替えるのは原作の常套手段ですが、舞台の構成となると、より一層味わい深いものになっていて、めちゃくちゃよかったですね…!

しかも「森の中で・b」では真っ暗闇のなかでふたりが会話しているのですが、「森の中で・a」では焚火をしていて、キノがその焚火を土で消すとともに本編が終わるというのが、原作通りとはいえあまりにもズルい演出だ…!と思ってしまいました…

 

ああ!今回観に行って正解だったなあ~!ほんとうにありがとうございました…!原作ファンであるわたしも大満足でした…!♡

あわよくば、続編を何卒よろしくお願い致します…!まだまだ舞台で観てみたいお話がわたしにはたくさんあるんだ…!

「大人の国」と「何かをするために」と「羊たちの草原」と…あとわたしはシズ様御一行の話がわりかし好きなので「船の国」をぜひ…!ティーをこの目で見たいんだ…!